第８話「いいカンジに立ってきた」


　　「美咲……絶望が、全身から漂っているわ」
　　「だって……だってしょうがないじゃない！」
　　「一番愛する人と引き離されるワタシの苦しみ、みんなにはわからないわよっ！」
　　「分かる……私には分かるわ、美咲！　独りの夜って寂しいもんね……切なくて、指が勝手に……やン♪」
　　「七海ちゃん、ちょっとキャラ変わったかも……美咲ちゃんも珍しく、悲劇のツンデレお嬢様っぽいし」
　　「……誰がツンデレよ、人を勝手に分類しないっ！」
　　 びすっ！
　　「ひぃん、痛いよぉ……でもいつものテンション、戻ってきたかも」
　　「ううん、それは違うと思うわ、葵」
　　「えっ……なんで？」
　　「……美咲の生きる原動力、『お兄様といつも一緒♪』エナジーが失われつつあるのよ。このままだと……」
　　「このままだと？」
　　「エナジー切れで『暴走』するわ。そうなったら、誰も止められない……葵、食べられちゃうかもね」
　　「や、やだヤダッ！？　葵、美味しくないよぉ！」
　　「……違う意味で、食べられちゃったりして……むふふっ」
　　「七海……いいカンジにキャラが立ってきたわね」
　　「そ、そんな事ないよぉ！」
　　「コホン……でも美咲、私たちじゃ美咲の力になれないかなぁ？」
　　「七海、それは……」
　　「……みんなには関係ないコトよ、ほおっておいてちょうだいっ！」
　　「美咲……」
　　「美咲ちゃん……珍しく悲しそう」
　　「どうやら、本当に重症ね……」
　　「ねぇ、お兄さんと何があったの？　これでもみんな心配してるんだよ、美咲の事」
　　「………………」
　　「み……みんな……」
　　「……ねっ？」
　　「あ……あのね、実は……」
　　「うんうんっ、なになになにっ！」
　　「……ちょっと、葵」
　　「あぅ？」
　　「アンタは黙ってなさいっ！」
　　 びすっ！　びすっ！　びすっ！
　　「あぅぅ……やっぱりいつもと同じ役なのね〜」
　　「葵は明確にＭ、だしね」
　　「あ、葵！？　今度から、私を『お姉様』って呼んでいいのよ！？」
　　（あぁ……こんな事考えたら。お姉さまに怒られちゃうかも……でもそれはそれで、でへ♪）
　　「……アンタら、聞く気あるの？」
　　「あっ、あるある、思いっきりあります！　お兄様がどうしたの？」
　　「だから……留学するの、家から出て行っちゃうのよ！」
　　「えっ、いきなりそんな展開に……」
　　「運命に引き裂かれてしまうのね……夜毎乱れる、禁断の兄妹が」
　　「……ちょっとそこ、余計な言葉多い！」
　　「ああ、でもどうしてお兄様が、ワタシを残して留学なんてしてしまうのよっ！」
　　「……実は美咲ちゃんとの縁を切りたいだけだったり……うぎゃっ！」
　　 びすっ！　びすびすびすびすびすびすっ！
　　「ぜぇ、はぁ、ぜぇ……」
　　「………………（活動停止中）」
　　「何故、どうして、何がどうなってるっていうのよ、お兄さまぁぁぁ！」
　　「……美咲の身体に飽きただけだったりして……フフフッ」

次回に……続くっ♪

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