第14話 「それともワ・タ・シ♪」


  お母さん、大変なことになってしまいました。
  一人暮らしをするようになって早数年――
  初めて我が家にお泊まりに来たのは、私より一回り以上年下の女の子でした。

  「へー、これがせんせいの部屋なんだ♪」
  「うう……なんでこんなことに……」
  「せまーい♪ 天井ひくーい♪ ウチとは大違いねー」
  「蓬莱泉さんのマンションと比べないで。あんな高級マンション、普通の人は住めないわよ」
  「ふーん。でも、キレイに片付いてるわね」
  「さすがは、せんせいね♪」
  「ウチなんか、ねえさまがすぐ散らかしちゃうのよね」
  「週に一回、ハウスキーパーさんが来るんだけど、それでも間に合わないくらい」
  「は、ハウスキーパー……」
  (他人に掃除してもらうなんて、お金持ちの発想だわ……)
  「じゃあ、せんせい」
  「へ?」
  「ほら、こういう時、お決まりのセリフがあるでしょ」
  「え……」
  「もうっ、ニブいわねー」
  「お風呂にする? お食事にする? それともワ・タ・シ♪」
  「ふええええっ!?」
  「ちなみに、わたしはお風呂からがいいわ。もちろん、せんせいと一緒にね?」
  「あ、ああ……」


  ×   ×   ×


  そんなワケで……
  私は今、教え子の女の子と一緒に、我が家の手狭なお風呂に入っているのです。
  「ど、どうしてこんなことに……」
  「ちょっと、せんせい」
  「へ?」
  「いい加減、そのバスタオル外しなさい」
  「で、でもっ」
  「心配しなくても、せんせいはプロポーション良い方よ?」
  「ちょっとお尻にお肉つきすぎだけど」
  「そ、そういうことじゃなくてっ」
  「うるさいわね、いいから外しなさい!」
  「はうあああ!?」
  「これでよし。と」
  「脱がされちゃった脱がされちゃった脱がされちゃった……」
  「じゃ、わたしの髪を洗ってちょうだい」
  「え? か、髪を?」
  「そ。いつもはねえさまが洗ってくれるんだけど」
  「う、うん……」


  ×   ×   ×



ワシャワシャ……


  「ん〜、とっても上手よ、せんせい」
  「あ、ありがと」
  (それにしても、なんてキレイな髪かしら……)
  (細すぎず太すぎず、指の間をすり抜けるみたいにツヤツヤ……)
  「あ、そこそこ」
  「へ?」
  「今のトコ、とっても気持ちよかった」
  「えと、ココかしら?」
  「んんっ……ちょっと右」
  「ココかな?」
  「そうそう……ん、ん……気持ちいい〜」
  「ふぅ……」
  (人の髪を洗ってあげるなんて……なんだか不思議な気分)
  「それじゃ、流すわね?」
  「ええ、いいわ」

  シャァァァッ
  「しっかり泡が残らないようにね」
  「はいはい」
  (こんな感じ……かな?)

  キュッ
  「はい。キレイになったわ」
  「ありがと。じゃ、つぎはせんせいの番ね」
  「へ……?」
  「このわたしが、隅から隅までじーっくりたーぷりキレイにしてアゲル♪」
  「え、ええ? えええ!?」
  「うふふふふ……ジッとしなさい、せんせい」
  「ひ、ひぇぇぇぇぇっ!?」


次回に……続くっ♪

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