第13話 「許してあげないんだからっ」
せんせいのことは、ねえさまからずっと聞かされていた。
物静かで、優しくて、側に寄ると良い匂いがする。
思わずイロイロしたくなっちゃうくらい表情が豊かで……
だから、ねえさまが日本に戻ると言いだした時、わたしはすぐにお願いした。
『聖ミカエル女学園に通いたい』
だって、そこにはせんせいがいるって知ってたから。
「なによ……せんせいのバカ……ぐすっ」
「わたしのこと、迷惑みたいに逃げ回って……」
「もう知らない……せんせいなんて嫌い……ねえさまも嫌い……嫌い……嫌い……みんな嫌い……」
「やっぱり、お家にいたのね」
「っ!?」
「蓬莱泉さん、無断欠席はいけないわ」
「せ、せんせい!?」
「……連絡をもらったの。あなたのお姉さんから」
「ねえさまから……?」
「お姉さん、先週から出張してるんですってね? どうして言わなかったの?」
「だ、だって……」
「あーあ、お部屋をこんなに散らかして……」
「ていうか、どうしてせんせいがわたしの家にいるのよ!?」
「お姉さんからカギの場所は聞いてたから」
「そういうことじゃなくて!」
「ごめんなさい、蓬莱泉さん」
「え……」
「私、あなたにヒドイこと言っちゃったわね」
「本当にごめんなさい……」
「……ふん! 謝っても許してあげないんだからっ」
「私、蓬莱泉さんがあんなに簡単にみんなをまとめちゃうから……なんだか自分が情けなくなって……」
「それで、つい蓬莱泉さんに八つ当たりを……」
「…………」
「ごめんなさい! 許してちょうだい!」
「やだ。ぜーったい許さない」
「お、お願い!」
「ふんっ」
「お願い! なんでもするから!」
「……なんでも、する?」
「う、うん。なんでも」
「じゃあ……」
「せんせいのうちにお泊まりしたい」
「え……?」
「ねえさまが出張から帰ってくるまで、せんせいの家に住みたい」
「ええ!? それはダメよ!」
「なによ、さっきは 『なんでもする』 って言ったじゃない」
「確かに言ったけど……」
「ほ、ほら、私の家、蓬莱泉さんのとこに比べたらぜんぜん狭いし!」
「ベッドだって1つしかないからっ」
「じゃあ、せんせいと一緒に寝る」
「一緒に!?」
「お夕飯は、せんせいの手作りじゃなきゃ嫌よ」
「ついでにお風呂も一緒に入る」
「ええっ!?」
「嫌とは言わせないわよ?」
「う、うう……はい」
「(なんだか、大変な約束をしてしまった気が……)」
次回に……続くっ♪
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