第6話 「バレちゃった」




  ‘あの人’は地味で目立たない私のことをいつも 『可愛い』と言ってくれました。
  初めて会ったのは物心つかない頃。
  近所に住むキレイなお姉さん――
  それが私の第一印象でした。


  颯爽と歩く‘あの人’を、いつも遠くから見ていた私。
  ‘あの人’の姿を見るだけで、胸が苦しくなる。
  だけど、一瞬たりとも目をそらせない――
  それが恋だと気付いたのは、ずっと後になってのこと。


  「蓬莱泉……蓬莱泉……あった!
  「えっと……蓬莱泉瑠奈、保護者の名前は……
  「あ、ああ……あああああああっ!?」
  「な、なんで気付かなかったの……私ったら……」
  「……蓬莱泉さんは、あの人の‘妹’なんだ」
  「あーあ、バレちゃった」
  「蓬莱泉さん!?」
  「ねえさまにはギリギリまでナイショにしなさいって言われてたんだけど」
  「ど、どういうことなの……?」
  「わたし、ねえさまからすーっとせんせいのこと聞かされてたの」
  「わたしの……こと?」
  「学生時代はとにかくモテモテで、上級生も下級生も関係なく手を出しまくった挙げ句……」
  「生徒会長に就任してミカ女の‘女王’として君臨したわたしのねえさまが……」
  「唯一プラトニックな関係を貫いた後輩――」
  「そ、それって、私のこと?」
  「ずっと気になってたの」
  「ねえさまがそれだけ‘本気’になった相手って、どんな人なのかって」
  「え……」
  「会ってみて、よーく分かったわ。一目見た瞬間、電気が走ったみたい体が震えたわ……」
  「そして強く思ったの」
  「『せんせいを自分のモノにしたい』って」
  「え? え? ええ!?」
  「ねえさまには悪いけど、せんせいを恋人にするのは、このわたしよ。だから……」
  「だ、だから……?」



  「覚悟しておいてね♪」
  「ええーっ!?」


次回に……続くっ♪

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