第4話 「誓いのキス」




  あの子は教え子。
  そして私は教師。
  なのに、あの瞳で見つめられると何も言えなくなってしまう。


  細く切れ長の眉の下、宝石よりも強く輝くあの瞳――
  どこか‘あの人’の面影を感じる少女を見ると、
  私は不思議な胸の高鳴りに苛まれるわけで……
  ああっ!? 私ったらどうしちゃったのよーっ!



  「……蓬莱泉さん」
  「…………」
  「ほ、蓬莱泉さん、聞いてるの?」
  「ふたりきりの時は、瑠奈って呼びなさい。そう言ったでしょ?」
  「うぐ……」
  (だ、ダメよ貴子! 教え子の迫力に負けるなんて、そんなの教師失格よっ )
  「蓬莱泉さん。海外暮らしが長くて、ちょっと日本の学園に慣れてないのは分かります」
  「だからって、人前で……その、き、キスをするなんて……良くないと思うのっ」
  「なぜ? クラスのみんなは喜んでくれたわ」
  「そ、そう言う問題じゃないの! キスなんて、軽々とするものじゃないのよっ」
  「ふぅ……せんせいって聞いてたよりもずっと頭が固いのね」
  「え……」
  「それに、軽々しくなんてしてないわ。本気で愛を込めてしたもの」
  「よ、余計に問題ありです!」
  「なに言ってるの。せんせいをわたしのモノにするための‘誓いのキス’なんだから」
  「か、勝手に私を貰わないで!」
  「それに、舌は入れなかったんだからそう大騒ぎすることもないでしょ」
  「し、舌を――!?」



  (舌を入れるって、噂に聞く‘ディープキス’ってやつよね?)
  (やっぱり、海外暮らしが長いとそういうのも常識なのかしら……? )
  「人前でディープキスなんて、せんせいには刺激が強すぎだと思うから……」
  「今度ふたりきりの時にジックリ……ね?」
  「だから勝手に決めないでー!?」


次回に……続くっ♪

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